右手に腕時計は【愛と平和の象徴】

魅力向上委員会 shun です。

皆さんは腕時計をどちらの手に着けますか?

ほとんどの人は左手に着けるはずです。それは右利きの人に合わせて時計が設計されていることで、何となく「時計は左手に着けるのが常識」と無意識に着けている人もいるでしょう。

中には僕みたいに「人と同じことをするのが嫌」(ちょっと極端ですが…)だと感じたりするタイプの人は、右手に腕時計を着けているかもしれません。

そんな時の理由が「みんな左手に着けてるから俺は右手派」と言うだけだと、ただのひねくれ者に思われてしまう可能性もあります。

そこで、こんな答えはいかがでしょうか…

『Peace of mind』

草木が生い茂る丘の中に紛れ、息を潜めている二人の男がいる。

「結局生き残ったのは俺たちだけか…」

ケヴィンはそうつぶやき、水筒に残った僅かな生温い水を飲み干した。

マシューはライフルを構え、スコープを覗き込んでいる。この場所で2日も狙いを定めているが、ロドリゲスは姿を現さない。

時おり木々を揺らす優しい風だけが二人の心を静めてくれていた。

「1130にヤツはここに来る、本部はそう言っていた。」マシューは左腕の時計に目をやる。ケヴィンも同時に時刻を確認していた。

「その情報、本当に信用していいのか?ここに来るルートも極秘なのにも関わらず、つり橋で襲撃を受けるなんておかしいと思わないか?それに…」

マシューはケヴィンの胸ぐらを掴み、強引に身体を伏せさせた。手渡された双眼鏡を持つケヴィンはイラ立ちと興奮が混じり合う中、マシューが指をさす方向を覗き見た。

「…ロドリゲス!?」ケヴィンはマシューに答えを求めた。「俺もそう思うが、確実にヤツだとは断定できない。頬にある傷もこの距離では確認が取れない。それに影武者の可能性もある…今は下手に動かない方がいい。」

「ケッ!」と唾を吐きながらケヴィンは無線機をいじりまくっていた。「クソッ!本部には繋がらねぇし、食料も残ってねぇ!」

マシューはケヴィンが落ち着くよう、話題を変えた。「まぁそう熱くなるな、このミッションが終わったらお前のお気に入りのカワイ子ちゃんがいる、あのパブで浴びるほど酒を飲もうぜ。」

ケヴィンは「あぁ、そうしよう…」と笑顔を見せたが、不安からは抜けきらなかった。

「なぁマシュー、どうやってこのミッションを成功させるんだ?」

「俺たちは今までいろんな状況の任務をこなしてきた。今回も必ず成功させてみせる。」マシューはそう答えたが、現状において打つ手がないことは自分でもよくわかっていた。そんな思いを見抜いているかのようにケヴィンは話し始めた。「俺が今まで生き残って来られたのもアンタの助けがあったからだ。だから今回ばかりは俺のプランを聞いてくれ。」

マシューはケヴィンの眼差しを見据えている。

「まず本部への無線は届かないが、俺たち二人の無線は生きている。そこで俺があの建物に侵入しロドリゲス本人かを確認する。確認が出来たらここから見える赤茶けた鉄の扉の前にヤツをおびき出す。そこで一発 ”ズドン” 。どうだ?」

「ダメだ。危険すぎる。」マシューは考える間もなく答えた。

だがケヴィンは怯まなかった。「たまには俺にもカッコつけさせてくれないか?」ケヴィンの鬼気迫る表情を初めて見たマシューは、この提案を受け入れるしか選択肢は無かった。

「OK!決まりだ!」興奮状態のケヴィンに対しマシューの冷静さが増してゆく。「あの鉄の扉の前ではヤツを正確に捉えることは難しい。3mほど東にあるドラム缶の前までヤツが来た時に合図をくれ。」「じゃあヤツを地獄に送るコードネームを決めよう、てかもう決めてある。俺の最愛のオンナの名だ。その名前を俺が言ったら、ヤツはあの世行きだな。」

マシューはケヴィンの作戦が最善ではないことを分かっていたが、あいつの気持ちを止めることは出来なかった。無線のテストを数回行い、意気込むケヴィンを見送った。

この集落にはロドリゲスと思われる男と取り巻き5人しか見当たらないので、ケヴィンが首尾よくやれば一瞬で片が付く。マシュー自身も体力の限界が近いことも感じている。集中力がいつまで持つかが自分との勝負だと。

しばらくするとスコープの向こうに、ゆっくりと建物に忍び寄るケヴィンの姿が見えた。敵を背後からナイフで仕留め、死体を近くの小屋の中に隠した。あいつはどうやって標的を目標地点までおびき寄せるつもりなんだ?ケヴィンにはきっと策があるだろうと思い、聞かなかったことをマシューは少し後悔し始めた。

鉄の扉付近まで接近しているケヴィンに「一人ずつナイフで仕留めていくつもりか?」

無線の返事を待つマシューに緊張感が高まる。

「…それもいいが、俺のナイフよりアンタのラ…」ケヴィンは聞き覚えのある弾けた音が聞こえた瞬間、左の肩に燃えるような痛みを感じた。

「クソッ!ばれたか!」マシューはトリガーを握る手に精神を集中させた。

スキンヘッドの大男と長髪の男、黒人の男が奥からゆっくりと現れた。「ボス、こいつどうします?」「仲間が近くにいるだろう。こいつを囮におびき出す。」ケヴィンは朦朧とする中、ある男を見上げた。不敵な笑みを浮かべながら長髪を耳にかけ、ケヴィンを見下ろす男の頬にはしっかりと傷跡が刻まれていた。

「なぜ、ばれたのか、聞きたそうだな。よし、特別に見せてやろう。」ロドリゲスは大男に指で指示をした。ケヴィンが目にしたのは自分たちが使っている無線機そのものだった。

マシューはスコープ越しにそれが無線機だと気づき、襲撃されたときに持っていた仲間のモノだと分かった。

「俺たちに無線機を奪われていることにも気づかずに。間抜けな兵士だな。」大男が無線機をケヴィンにチラつかせようと顔を近づけた時、左手で隠し持っていた小型ナイフを首の横に突き刺した。大男は驚愕の表情のまま、前に倒れ込む。ケヴィンは押しつぶされる寸前に身をかわし、肩の傷を押さえながら立ち上がって走り出した。しかしロドリゲスの銃弾がケヴィンの右足を捉え、苦痛の叫び声と共に転倒した。

マシューは長髪の男に狙いを定め続けていた。こいつがロドリゲスにほぼ間違いない。しかし、この位置からでは木の枝が邪魔をしている。それにもしヤツがロドリゲスではなかった場合、確実に逃げられてしまう。「ケヴィン、コードネームを言え!」心の中でそう叫んだ。

ロドリゲスは黒人の男に辺りを捜索するよう指示をし、ゆったりとした足取りでケヴィンの方へ歩き出した。ケヴィンは右手と左足だけで匍匐前進を行い、じりじりと前に進んでいた。「まるで虫けら同然だな。周りにいる仲間はなぜお前を助けに来ないんだ?無線で呼んでみろよ。」ロドリゲスはケヴィンを無理やり立たせ、羽交い絞めにし、眉間に銃口を突き付けている。「ほら!助けを呼ぶんだよ!弱虫兵士さんよぉ!」

「…ザ…ラ」マシューの耳にケヴィンの声が微かに聞こえ気がした。

「ケヴィン…おまえ…」

ロドリゲスはケヴィンの首を更に締め上げた。「おっと、これじゃあ苦しくてハッキリ話せないよな。さぁ、ハッキリとしゃべりな!」

ケヴィンは苦悶に満ちながらも勝ち誇った笑顔を浮かべ、最愛の女性の名を呼んだ。

「イザベラ…」

その直後、二人の正面に見える丘の茂みに光が瞬く。その光に気づいた瞬間、ケヴィンとロドリゲスは閃光を真正面から受け入れていた。ケヴィンは膝から力なく崩れ落ち、ロドリゲスはドラム缶に寄りかかりながら腹部の違和感に困惑していた。

ケヴィンは靄のかかる視界の中、右手で手榴弾をガッシリと握り、歯でピンを抜いた。

「…俺には分かる…オイルの匂いだ…流石だ、マシュー…」

そう天に告げた時、ケヴィンの全てのエネルギーが枯れ、握りしめていたものが解放された。

巨大な滝の流れる岩の陰で、マシューは頭を抱え、うずくまる。「手の震えが止まらない…敵を仕留めるのには何の抵抗も無かったのに…俺はアイツを、ケヴィンを…」マシューは滝の轟音の如く、叫び声を上げた…

マシューは公園のベンチに座り、勢いよく流れる噴水を茫然と眺めている。

「無事に帰還出来たみたいね。」そこには屈託のない笑顔で迎えてくれるアンジェラがいた。

マシューは今回の任務での出来事をアンジェラに話した。

「あれから基地に戻って銃を握ってみても、うまく撃てなくなってる…」

アンジェラはマシューの頭を抱き寄せ、しばらく包み込んでいた。

マシューが落ち着きを取り戻すと、アンジェラは「今何時かなぁ」とつぶやき、マシューの左手に着けてある腕時計を外し始めた。

「…アンジェラ?」

戸惑うマシューに「はい、右手を貸して。」とアンジェラは言い、その腕時計を右手に付け替えた。

「これでよし!」

「…って何がいいんだ…?」

「まず、腕時計が右手にあると、時刻を確認するとき、一度トリガーから手を離さないといけなくなるでしょ。その一瞬の隙が命に関わることになるので、もう、銃を持たない、撃てない、即ち右手に時計を着けることが、”平和の象徴”になるということね。そしてもう一つは、こうやって手を繋いだ時に、腕時計が当たらないからいつでも繋がっていられるってことよ。」

マシューは、このタフでチャーミングなアンジェラに完全に魂を撃ち抜かれる。

そしてこの時、マシューは生まれて初めて『Peace of mind』(心の平安)を感じた…

~Fin~

右手に腕時計を着ける、僕の理由

僕は小学校4年の時に女の子のハンカチを拾おうとして、3階の校舎の窓から転落しました。その時のケガが原因で、右の手首の骨が少しずれた状態で完治してしまいました。そしてその状態をカモフラージュする為にあえて腕時計を着けることにしたのがきっかけです。元々人と同じ事をするのが嫌な人種だったので、「右手に腕時計」の意味が無かったのですが、ある時このエピソードを知り、聞かれれば”平和の象徴”だと言うことにしてます。(いつも用意してる割にあまり聞いてもらえないのが寂しい現状ですが…)

人にはそれぞれ自分にしか分からないコンプレックスがあります。自分ではとても大きな問題として捉えていても、周りからしてみれば大したことではない事もあります。

自分を誇りに思い、自分らしい魅力をさり気なくアピールしていきましょう。

集約

  • 銃を持たない平和主義の象徴
  • 手を繋ぎやすくする思いやりの象徴
  • コンプレックスを誇りに変える象徴

右手に腕時計を着ける理由を調べてみたところ、”銃を撃たない”=”平和の象徴”というのが最もよく伝えられているみたいですが、真意の程は分からないみたいですね。『Peace of mind』はそこから着想を得て、いろんな映画のエッセンスも織り交ぜながら自分なりに書いてみました。右手に腕時計を着けていて、自分なりの答えがまだ用意出来てないとしたら、お好きな方、使ってみてください。それに、もし、今左手に腕時計をしていて、これを読んで右に変えようかななんて思っている好色漢な方、ぜひお待ちしております。

今回の記事は以上になります。

右手に腕時計は【愛と平和の象徴】が皆さんの魅力の向上に貢献できれば幸いです。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

☆今日も貴方は素敵です☆