荘子に学ぶ、魅力的な人生に必要な抜け感が絶妙

 

魅力向上委員会  shun  です。

今回は、荘子の中から “自然に生きることこそが人生を楽しめる” を説いた2つをご紹介したいと思います。

荘子は自然界の生き物を例えに使うことが多く、他の中国古典に比べて少し寓話的なところがあり、スッと心に響く思想です。

 

有能な故の困難

直木ちょくぼくは先ずられ、甘井かんせいは先ず

真っ直ぐな木は人の役に立つので重宝される。美味しい水の湧く井戸は皆が飲み尽くすので直ぐに涸れてしまう。

人は本質的に真っ直ぐに生きたいと思う。僕もそうあるべきだと。

しかし、ある時この荘子の言葉に出会って、こう感じました。

“完璧な人間にならなくてもいい。むしろならないほうが幸福なのかも。”

 

栃木県日光市にある世界遺産、徳川家康の霊廟「日光東照宮」。

ここにある陽明門(通称:日暮門)を支える柱は12本あるのですが、その内1本だけ文様が天地が逆さまになっています。

それは何故か…

すべてを同じ向きにすれば完成します。ですが、あえて”未完成”に仕上げたと。

完成はゴール、すなわち終焉を指します。完璧に作り上げないことにより、永久の繁栄を象徴しているのでしょう。

 

人も同じで、外見においてはあまりにも素敵過ぎると近寄り難くなりますし、性格もあまりに人が良すぎると何でも受け入れてしまい、ストレスに溺れてしまうかもしれません。

人間界では余りに湾曲しすぎると社会から弾かれるので、絶妙な抜け感とヒネリが必要ですね。

 

『曳尾塗中(えいびとちゅう)』

とある池のほとりに、竹で作った釣竿を持ち、ほのかに揺れる水面を眺めている男がいる。

男の衣服は所々擦り切れてはいるが、その色あせた藍が佇まいと同一化している。彼はそっと目を閉じ、風が草木と遊ぶ音、陽が大地を照らす温もり、小鳥たちがささやく愛の声。今ここにある事に満たされながら緩やかに目を開く。

そしていつもの倒木に腰を下ろし釣り糸を垂らす。

しばらくすると、風がよどみを運んできた。

「どおりで釣れないわけか…」

 

三頭の蹄があぜ道を走る。鎧を身に着けた兵士が二人、白の衣を纏った従者が馬に乗り、少し開けた池の対岸に出た。

従者は釣り人の少し手前で馬の歩みを止め、二人の兵士に”ここで待て”と右手で合図をし、馬を降りた。

「少しお尋ねしたいのですが、荘周という人物を探しているのですがご存知ありませんか?」

釣り人の視線は竿の先にある。

「…俺に何の用かな。」

従者は堪らず安堵の笑顔を溢した。「あぁ、やっと荘周殿に巡り会えました。我らは楚の国から参りました。王からの要望で、ぜひとも荘周殿に我が楚国を繁栄させるのにご助力頂けないでしょうか。貴殿ほどの知恵者が来てくれるなら王はどんなモノでも与えてくれるとおっしゃっています。」

荘周の視線はすぐ近くの浅い場所から顔を出す一匹の亀に移っていた。彼は従者を手招きし、自分が座る流木の隣に腰を下ろすよう促した。

従者は少しぬかるんだ地面を歩くたび泥が跳ね、白の衣に土色の紋様が加えられていく。「クソッ」そう心で呟いた。

彼が倒木に浅く腰掛けると荘周はそこの亀を指差し、「楚の国と言えば亀を神の使いとしていて、その甲羅を祀っているそうだな。」

「流石は荘周殿、その通りでございます。」

「では君に聞くがその亀は泥水(塗中)で尾を引きずって(曳尾)生きていたかったか、神格化され崇められたかったか、どちらだと思う?」

「それは亀として亀らしく生きていたいでしょう。」

意気揚々と答える従者に対し、荘周は言葉に重力を持たせた。

「俺も亀と同じで泥水の中を住処にしたいんだよ。君なら、解るだろ。」

そう告げると、荘周は再び釣りをする一人の男に戻った。

従者はその意を悟り、奥歯を噛みしめる。どんな言葉を発しても空虚に終わる気がする。頭の中を通り過ぎる風の音が更に恐怖心を煽っていく。彼に出来ることはただ一つ。帰る国に向け、一歩を踏み出すことだけだった。

釣り人の視界から白くはためく衣が遠ざかっていく。馬の駆けだす音がした後、その方向に初めて視線を向け、静寂が訪れるまで彼らを見送った。

顔を水面に戻すと、亀が居た場所には黄土色の煙が水中で漂っている。

「俺にとっては生きてる”おまえさん”の方が神がかってるぜ。」

男はすべての生き物に感謝し、微笑んだ。

その瞬間、竿がしなり、生命の躍動感が押し寄せてきた…

 

~FIN~

 

まとめ  集約 

  • 究極に近い未完成こそが、究極の魅力を生む
  • 自らの個性を理解し、社会と最も心地良い距離を見つける

『曳尾塗中』は荘子の中に出てくるお話なのですが、僕なりのアレンジを利かせて書いてみました。

荘周は過去、懸命に国に勤め繁栄をもたらした。しかしある時から人の本質は自然と共に生きることだと気づき、隠遁生活を送っている。ある日、彼が日課の釣りをしていると、隣国の使いが荘周を口説きに来る。どうやって相手を納得させ、帰ってもらえるか。そこで亀の話から自分は優遇されてまた政治の世界に戻るより、生きるのにそれなりの苦労があるが、人らしく自然と共に生きていたい。亀が池で尻尾を引きずり泳ぐことも同じであると。

相手の国には命を絶たれ神格化された亀。荘周にはプライドの高い従者を説き伏せるきっかけになる生きた亀。彼にとってはその亀がそこに居たからこそ説き伏せられたと思い、感謝しようとすると、もうそこには立ち去った土煙しかなかった。彼はその亀に神の粋な計らいを魅せられたと。

人は欲や権力に流されやすい。しかし、それが本当に自分が自分で居られる場所なのかを考えさせられる説話です。

どう生きるのが幸福なのか、魅力的なのか、を皆さんが考えるきっかけになれば幸いです。

 

今回の記事は以上になります。

荘子に学ぶ、魅力的な人生に必要な抜け感が絶妙 が皆さんの魅力の向上に貢献できれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうごさいます。

 

☆今日も貴方は素敵です☆