魅力向上委員会 shun です。
今回のテーマは、
自意識過剰男のナルシシズムが生み出す受難の結末
「あなたは自分のことをナルシストだと思いますか?」
そう聞かれて「はい、そうです。」と答える人はかなり少ないはずです。では、
「あなたは自分のことをイケてると思いますか?」
こう聞かれるとどうでしょう?
「まぁ、そうですね~」
くらいの答えが返ってくる比率は、”ナルシスト”と聞かれるより多いような気がします。
では世の中で「自称イケてる男性」は本当にモテているのでしょうか。
そしてそんな男に恋をした相手は本当に幸せになれるのだろうか。
それでは、まずギリシャ神話の在る物語について綴って参ります。
『ナルキッソスの運命』
ナルキッソスは昨日の晩立ち寄った村の娘との情事を思い返しながら、森を散策していた。そしてその男を木陰から見つめる森の妖精エコー。彼女の視線はナルキッソスを追いかけている。「噂通りの美男子だわ…」彼女の乙女心がざわめきたつ。
ナルキッソスはしばらく歩くと表情が曇りはじめた。そして辺りを見渡す。「しまった…道に迷ったかもしれない。」そんな困惑の色男の前に微笑みを浮かべた妖精が姿を現した。「あぁ麗しの妖精さん発見!やっぱり俺って持ってるわ」ナルキッソスはお得意のキラースマイルで薄いベールに身を包んだ妖精に語りかける。
「ちょっと道に迷ってしまって」とナルキッソス。「ちょっと道に迷ってしまって」と繰り返す妖精。「村への道はどっち?」と聞いても「村への道はどっち?」と聞き返してくる。ナルキッソスは無邪気な妖精がイタズラをして、気を引こうとしていると感じた。しかし、「妖精さんの名前は?」と聞いてもそのまま返ってくる。何度話しかけても同じ言葉が聞こえる。次第にナルキッソスは苛立ちが募りはじめ、怒りの感情が沸き上がる。
“決してからかっている訳じゃないの!分かって!ナルキッソス様…”しかしエコーの心の声は決して伝わることはなかった。
遂にナルキッソスは自分の言葉を何度も何度も繰り返す妖精に罵声を浴びせ、森の奥深くへと分け入って行った。
エコーは瞳に涙を潤わせながら、近くの大木にゆらゆらと身を寄せるように漂った。何を見るでもなく、ただただ自分を哀れみ、遠くを見るしかなかった。
「あれじゃあ余りにもエコーが可哀想よね…」「ほんとね…」「元はと言えば私たちのために…」3人の妖精達がひそひそと語り合う。「まさかこんなことになるなんて…」
…数日前
ゼウスは4人の妖精たちを侍らせ、豊かな森で採れる食材を前に戯れていた。すると緩みっぱなしだったゼウスの顔が急に青ざめてゆく。「まずい!妻のヘラが来る!」その言葉を聞いたエコーは真っ先に立ち上がった。「ゼウス様。ここは私が時間を稼ぐのでその間に身を隠して下さい!」小さく頷いたゼウスは一瞬で大鷲に姿を変え、木々の間を縫うように飛び去っていく。妖精達が安堵の表情を浮かべるその少し後ろで、女神ヘラが佇んでいた。妖精たちはヘラの姿を目にしたとたん、身動き一つ取れずにいたが、エコーだけがヘラに向き合った。「ご機嫌いかがですか、ヘラ様。この森で採れる木の実やブドウ酒などいかがでしょうか?今ちょうどみんなで宴をしていたところで…」エコーは身振り手振りを交えながらどんどんと言葉を繰り出す。ヘラは湯水の如く湧き出るエコーの言葉にあきれ返り、その場を立ち去ろうとした。妖精たちは互いに視線を交わし合い、胸を撫で下ろす。しかしその時、ヘラの侍女がどこからともなく現れ、ヘラにそっと耳打ちした。振り返るヘラの顔は冷徹に輝く。「我が夫、ゼウスはどちらに?」妖精たちは恐怖で涙ぐむ一方、エコーは何食わぬ顔で辻褄を合わすようヘラに語りかける。”お喋りニンフ(妖精)”のおかげでこの場を切り抜けることが出来るほど、女神は甘くなかった。言葉をはぐらかし、言い訳する妖精は女神の怒りを買う結果になってしまった。「お黙り!」ヘラは瞳を薄紫色に輝かせ、エコーはその光に魅せられ倒れ込む。ヘラは収まることのない苛立ちを抱えたまま、天空へと飛び去って行った。気を失ったエコーに妖精たちが駆け寄り、言葉をかける。意識を取り戻した妖精の言葉は空虚な吐息に変わる。唯一声に出来ることは、皆が話しかけた言葉を繰り返すことだけだった…
妖精たちはそんなエコーを元気付けようと、巷で美男子だと噂のナルキッソスが近くに来ていることを教えた。エコーはナルキッソスの美しさに一瞬で魅了されたが、言葉を繰り返すことしか出来ない。想いを伝えられない妖精は、自分の言葉を話せないことと、ひどく罵られ失恋したショックで日に日に憔悴していった。そして遂には肉体まで薄れてしまい、言葉だけを繰り返す存在になってしまった。こんな状態になってしまったエコーに代わり、妖精たちは”義憤の女神ネメシス”に祈りを捧げた。「私たちを庇う為に頑張ってくれたエコーがこんな事になるなんて…」「エコーがあまりにも可哀そうです…」妖精たちは声を揃え、握り合う手のひらに一層の願いを込める。
「エコーの心を察することが出来なかったナルキッソスにどうか制裁を!!」
白き翼を携えた義憤の女神はエコーの想いを代弁する妖精たちの切なる願いを聞き入れた。絢爛な台座の上の宝玉には、ナルキッソスが泉のそばで木の実を食べながら髪をかき上げている姿が映し出されている。ネメシスはそこに映るナルキッソスにそっと”試練の息”を吹きかけた…
「はぁ~さっきの妖精、可愛かったのになぁ。まさかあんなにからかわれるとは…」その時、生温い風がナルキッソスに吹き付け、髪を掻き乱した。手で髪を整えるが、何度やってもしっくり来ない。ふと泉に目をやると、木々が水面に映し出されているのに気が付いた。水面を鏡代わりにしようと覗き込んだ瞬間、ナルキッソスはそこに映る”美しき青年”に囚われた。そこにいる美しい自分に手をかざすと、同じく手をかざしてくれる。微笑みかけると微笑み返してくれる。ナルキッソスは我を失ってはいけないと、水面から自らを引き離す。しかし、暫くするとまた自分に逢いたくなり、泉に顔を出してしまう。その肌に触れようと指先を近づけると、相手は揺らめきながら消えそうになる。ナルキッソスの心は揺さぶられ、ただただ相手が見つめ返してくれるのをじっと待つしかなかった。時間が再びナルキッソスを呼び起こす。恋焦がれる相手が目の前にいるのに、自分の思いは永久に届かない。でも愛さずにはいられない。そんな思いを抱えながら水面を眺めるナルキッソスは、そこに映る太陽と月が何回現れたのかも分からなくなっていた。次第に彼は自分を支える腕の限界を悟り始めていた。「僕の体はもうキミのものだ、だからキミと最後に一つになりたい…」そして、こう呟いた。
「愛しき人よ、さようなら…」
ナルキッソスは自分を抱きしめるかのように、そっと水面に吸い込まれるように身を沈めた。
「愛しき人よ、さようなら…」
女神ネメシスの風に乗って、エコーはずっとナルキッソスのそばにいた。そして、彼の最後の声を、愛しき人の言葉を、遠くの山々まで響くよう何度も何度も声が枯れるまで運び続けた…
妖精たちは、今日も森の中をはしゃぎながら散策している。そして澄んだ泉のほとりに見たこともない一輪の花を見つけた。
白と黄色に彩られた可憐な花は『水仙(ナルシサス)』と呼ばれ、水面を覗き込むかのようにうつむく…
自らの姿を映したがっているかのように…
~Fin~
自惚れと純愛
このエピソードでは、自分自身を買い被り過ぎると悲惨な結末が待つことを伝えています。
男性諸君、ちょっと摩訶不思議な女性に対しても、丁寧で温かな対応を心がけていますか?
女性諸君、自分大好きな中身の薄い男性に惚れ込んで、人生を捧げすぎてはいませんか?
エコーの異変に気づけなかったが故に自らに囚われることになった、ナルキッソス。
自信過剰男に魅了され、身を滅ぼしてまで尽くす妖精の純愛。
どちらも「自惚れ」が生み出した結末。
エコーは女神を言いくるめられるという自惚れ。
ナルキッソスは自分に惚れない女はいないという自惚れ。
ある意味、”自惚れ”とは究極の”純愛”なのかもしれません。
恋愛にもバランスが重要です。
自らを映し出す『社会』という水面を意識し、自らの愛情に囚われ過ぎないよう距離を取りましょう。
集約
- 恋愛での自信過剰は身の破滅を招く
- 相手の言葉だけを受け入れるのではなく、本心を読み解く
- 自分自身の評価と社会(周り)の評価には違いがあることを理解しておく
『ナルキッソスの運命』ではナルシストの語源になったナルキッソスの物語を書いているうちに、それに翻弄される木霊の語源になるエコーの物語も伝えておかないと思い、書き足しているとかなり長くなってしまいました。ナルシストは男性に向けて用いられますが、男女関わらず、自己愛が強い人ほど恋愛は上手くいかないことが多いようです。相手の愛を受け入れるスペースを大切に。
今回の記事は以上になります。
自信過剰のナルシシズムが生み出す受難の結末 が皆さんの魅力の向上に貢献できれば幸いです。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
☆今日も貴方は素敵です☆